<レビュー> 満島ひかり主演『海辺の生と死』7月29日(土)公開
「ついてはいけないでしょうか たとえこの身がこわれても 取り乱したりいたしません」この言葉が本作のテーマを物語っている。舞台は、終戦間近の昭和19年(1944年)12月の奄美カゲロウ島。国民学校教員として働く大平トエは、 新しく駐屯してきた海軍特攻艇の隊長 朔中尉と出会う。
© 2017 島尾ミホ / 島尾敏雄 / 株式会社ユマニテ
昭和19年(1944年)12月の奄美カゲロウ島(モデルは加計呂麻島とのこと)。国民学校教員として働く大平トエ<満島ひかり>は、 新しく駐屯してきた海軍特攻艇の隊長 朔中尉<永山絢斗>と出会う。朔が兵隊の教育用に本を借りたいと言ってきたことから知り合い、 互いに好意を抱き合う。
軍人らしくない朔に惹かれたトエが少しずつ気持ちが変化していく様が、淡々と時に情熱的に美しく描かれる。ふたりを応援する者がいたり、逆に土地の者や、戦時中とあって反対する者もいたり、その恋の行方が気になると同時に、奄美に伝わる歌が多く唄われる作品で、言語からその世界観に入っていく感じがあった。奄美大島にルーツを持つ満島ひかりさんの歌声も本作の魅力のひとつ。
トエの気持ちを表現する満島ひかりさんが好演しており、ラストに向かって、静かに熱する。限られた時間に朔との食事をしたり話したり…。まるで夜の数時間だけ夫婦のような生活。そんなある日、事態は一変。トエは朔を追いかけ、朔のいた砂浜の砂を触る感情表現が見事。
実話をもとにした原作小説から紐解いた本作。実際にはその後の暮らしから伺える様々なことに、きれいごとだけでは済まされない恋愛だったようだが、この時期を切り取って映画にすることで、純粋な想いを更に凝縮できた気がする。7月29日(土)の暑い中での公開。涼しげな音楽と共に、切ない恋を味わってほしい。
(編集 木下奈々子)
【予告編】
【STORY】
昭和19年(1944年)12月、奄美 カゲロウ島(加計呂麻島がモデル)。国民学校教員として働く大平トエは、 新しく駐屯してきた海軍特攻艇の隊長 朔中尉と出会う。朔が兵隊の教育用に本を借りたいと言ってきたことから知り合い、 互いに好意を抱き合う。島の子供たちに慕われ、 軍歌よりも島唄を歌いたがる軍人らしくない朔にトエは惹かれてい く。やがて、トエは朔と逢瀬を重ねるようになる。
しかし、時の経過と共に敵襲は激しくなり、沖縄は陥落、 広島に新型爆弾が落とされる。そして、ついに朔が出撃する日がやってきた。母の遺品の喪服を着て、短刀を胸に抱いたトエは家を飛び出し、 いつもの浜辺へと無我夢中で駆けるのだった・・・。
【作品情報】
『海辺の生と死』
出演:
満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種
脚本・監督:越川道夫
原作:島尾ミホ「海辺の生と死」(中公文庫刊)島尾敏雄「 島の果て」ほかより
配給:フルモテルモ、スターサンズ
公式HP:http://www.umibenoseitoshi.net/
【7月29日(土)テアトル新宿ほか全国順次公開】