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<レビュー>第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品『三度目の殺人』


全国314スクリーンで封切られ、公開3週目を迎えた映画『三度目の殺人』は、平日も息の長い興行が続きリピーターも続出しているという。9月24日時点で興行収入10億円を突破。『そして父になる』から4年、是枝監督と2度目のタッグとなる福山雅治を主演に、是枝組初参加となる名優・役所広司を迎えた。



©2017『三度目の殺人』製作委員会/第74回ヴェネチア国際映画祭

第74回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門へ選出された本作。現地時間9月5日(火)に福山雅治、役所広司、広瀬すず、是枝裕和監督が公式会見やレッドカーペットに参加。公式上映後には満席の会場から割れんばかりの6分間に及ぶスタンディングオーベーションが起こるなど、日本だけではなく世界中から大きな注目を集め、さらには、第42回トロント国際映画祭マスターズ部門、第65回サンセバスチャン国際映画祭パールズ部門でも出品された本作は、米映画評集計サイトのRotten Tomatoesで、88%(9/26時点)という高得点を獲得したという。


©2017『三度目の殺人』製作委員会/第74回ヴェネチア国際映画祭

『そして父になる』から4年、是枝監督と2度目タッグとなる福山雅治を主演に、是枝組初参加となる名優・役所広司を迎えた本作は、監督が近年描いてきたホームドラマから一転し、かねてより挑戦したいと考えていた法廷を舞台にした心理サスペンスとなっている。

勝ちにこだわる弁護士・重盛(福山)が担当することになった、死刑がほぼ確実な殺人事件。容疑者は、二度目殺人を犯した男・隅(役所)。供述は会うたびに変わり、動機は一向に見えてこない。やがて浮かび上がってきたは、被害者娘・咲江(広瀬)存在だった。なぜ殺したか?本当に殺したか?二度殺人を犯した男深い闇。その先に待ち受ける三度目の殺人とは―?

©2017『三度目の殺人』製作委員会/第74回ヴェネチア国際映画祭
先日開催された公開記念舞台挨拶イベントでは、「ヴェネチア国際映画祭レッドカーペットや記者会見に参加されていましたが、現地で観客反応はいかがでしたか?イベントに参加した感想や思い出深いエピソードなどあればお聞かせください」という観客の質問に、是枝監督は「緊張しながら公式上映で観客方と映画を観ていたとき、(福山さん演じる)重盛が鳥お墓を壊して掘り起こすシーンで、客席イタリア人方が声を上げたんですね。きっと敬虔なクリスチャン方だと思うんですけど、そういうところをビビットに感じて、面白いなと思いましたね」と回答。福山さんは「会場空気が硬質で、悪い意味硬さじゃなく、すごく集中しているような緊張感を感じました。終わった後は、少しずつ拍手が来るかなと思っていたんですが、終わるか終わらないかくらいタイミングでどっと来て、いい反応で良かったですね」と話したという。

©2017『三度目の殺人』製作委員会/9月19日(火)公開記念舞台挨拶イベント

【オススメポイント/REVIEW】
劇場で本作を鑑賞してきた。「真実」などなく、司法や法廷のルール上で、検察と弁護士で戦うのみと考える傾向のある主人公の弁護士の重盛。本来真実を暴くための法廷を、すでに決定しているとも言える裁判官の結論に帳尻を合わせるような裁判の進行に、今までは異なり「真実とは」を追求しだす重盛。
そして、好物のピーナッツバターをパンにつけて「生きる」ことに執着すら感じさせる二度目殺人を犯した男・隅。

© 2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ
三隅の発言は、重盛との面会の度に変わっていく。そして、次第に三隅に守りたいのではないかと思われる人物現れることから裁判は混乱し始めるのだ。
三度目の殺人。誰が誰を殺すのか。シンボリックに顔に跳ね返った血を手の甲で拭く演出にヒントがあるようだが、決して答えが出ないような、観客の解釈にゆだねることも可能な展開に本作の魅力を感じた。面会室でのガラスに映る重盛と三隅の顔の描写も必見です。
(編集・文 木下奈々子)

【ストーリー】

殺人の前科がある三隅(役所広司)が解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された事から物語は始まる。犯行も自供し、死刑はほぼ確実だった。その弁護を担当することになった、重盛(福山雅治)。裁判をビジネスと割り切る彼は、どうにか無期懲役に持ちこむために調査を始める。何かが、おかしい。 調査を進めるにつれ、重盛の中で違和感が生まれていく。三隅の供述は会うたびに変わる。動機さえも。なぜ殺したのか?本当に彼が殺したのか?得体のしれない三隅に呑みこまれているのか?弁護に真実は必要ない。そう信じていた弁護士が、初めて心の底から真実を知りたいと願う。やがて、三隅と被害者の娘・咲江(広瀬すず)の接点が明らかになり、新たな事実が浮かび上がる。


【作品情報】

出演:
福山雅治、広瀬すず、吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之介、市川実日子、橋爪功 / 役所広司

監督・脚本・編集:是枝裕和 (『そして父になる』『海街diary』)

撮影:瀧本幹也(『そして父になる』『海街diary』)
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ(『最強のふたり』)
撮影:瀧本幹也(『そして父になる』『海街diary』)
美術監督:種田陽平(『キル・ビルVol.1』『空気人形』)

製作:フジテレビジョン アミューズ ギャガ

配給:東宝 ギャガ

公式HP:gaga.ne.jp/sandome
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