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<レビュー>スタジオジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』フランスから登場


構想10年、制作8年――スタジオジブリ最新作が、フランスからやってきた!第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にて特別賞を受賞した『レッドタートル ある島の物語』が日本で公開した。
<作品ビジュアルを追加しました>


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それは、1本のアニメーション映画から始まった。

2000年に公開された『岸辺のふたり』(監督:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット)は、わずか8分間という短編にもかかわらず、父娘の愛おしい絆を丹念に描き、世界中を静かな感動で包み込んだ。『岸辺のふたり』は、結果、アカデミー賞短編アニメーション映画賞など多数の賞を受賞した。

スタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサーがこの監督の長編を観てみたいという気持ちが出発点となり、はじめての長編制作の打診を受けたマイケル監督は、尊敬する高畑勲監督から、長編映画の制作について助言を受けることを条件にこれを快諾したという。

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高畑監督参加のもと、スタジオジブリとシナリオ・絵コンテ作りから効果音・音楽にいたるまで、あるときは直接会い、あるときは海の向こうからデータを送って、節目節目で打ち合わせを重ねた。アニメーション制作の実作業はフランスを中心に行われ、実に8年もの歳月をかけて遂に完成させたのだ。

マイケル監督が、圧倒的なアニメーションの表現力で描く本作は、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にて特別賞を受賞。圧倒的な「自然」の描写力で彩られた、フランス発スタジオジブリ最新作が登場した。

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【REVIEW】

なぜ「彼」が島に引き寄せられるのか。

最初は“引き寄せられている”という意識はなかった。
ただ、何度か島を脱出しようとする「彼」を引き留める何かがあるような、繰り返し起こる不思議な出来事があった。

いつからレッドタートルは「彼」を知っていたのか。
ウミガメが成長する期間は知らないけれど、小さな「カニ」と一緒に冒頭から小さな「ウミガメ」が登場する。

「彼」は意思や感情を持っており、
どこの言葉はわからないけれど、やがて訪れた意思を伝えられる相手と言葉を交わしているようだ。

「彼」がその人に出逢った瞬間、空は晴れていて、少し薄暗く湿り気のあるように思えた島は、
澄み切った、きれいなブルーとグリーンに埋め尽くされていた。

この作品では、海水や茂みや小さな湖・岩は繊細で、透明感を感じさせる繊細な描写だった。

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とかく、この作品を見ていると自分の家族を思い出す。年の離れた弟の成長を思い起こすと、人が産まれて成長して自分の意思を持つのに、そんなに長い時間はかからないように思えた。

そして、最後に、なぜ島は「彼」を待っていたのか、意味が分かった気がして、レッドタートルの存在の意味が分かった気がした。

「彼」が島で一人でいるのに、極限状態にあるため、“幻想を覚えているのでは?”と思える場面はあるが、それが少しずつ現実に起こっている不思議なことと思え、そして最後に意味を知る。

フィクションの中の現実であることを信じるのに違和感はなかった。

スタジオジブリが海外のクリエーターをプロデュースして共同製作した作品。
観る意義があるという言葉ではなく、観て味わってほしい感動があると言いたい。そんな作品だ。

(文・木下奈々子)


【STORY】

どこから来たのか
どこへ行くのか いのちは?

嵐の中、荒れ狂う海に放りだされた男が九死に一生を得て、ある無人島にたどり着いた。
必死に島からの脱出を試みるが、見えない力によって何度も島に引き戻される。
絶望的な状況に置かれた男の前に、ある日、一人の女が現れた――。

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【作品情報】

原作・脚本・監督:
マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

脚本:
パスカル・フェラン

アーティスティック・プロデューサー:
高畑 勲

音楽:
ローラン・ペレズ・デル・マール

製作:
スタジオジブリ/ワイルドバンチ

プロデューサー:
鈴木敏夫/ヴァンサン・マラヴァル

公式HP: http://red-turtle.jp/

上映時間:81分/ビスタサイズ

スタジオジブリ/ワイルドバンチ/ホワイノット・プロダクションズ/アルテフランス・シネマ/CN4プロダクションズ/ベルビジョン/日本テレビ/電通/博報堂DYMP/ディズニー/三菱商事/東宝 提携作品

日本・フランス・ベルギー 合作

配給:東宝


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