<レビュー>新鋭作家ふくだももこの長編初監督作品『おいしい家族』
第40回すばる文学賞受賞・ndjc2015選出など、文学・映像両才能を発揮する新鋭作家ふくだももこの長編初監督作品『おいしい家族』が9月20日(金)より全国ロードショーとなる。食を介して家族を描く『家族ゲーム』(森田芳光監督)、『お葬式』(伊丹十三監督)のテイストを踏襲する本作の音楽は、伊丹十三監督作品『マルサの女』『あげまん』などを手掛ける本多俊之が担当している。

©2019「おいしい家族」製作委員会
仕事も夫婦関係もうまくいかない主人公が母の三回忌に実家に帰ると母の服を着た父が立っていた―。主人公・橙花を演じるのは、話題の若手女優・松本穂香。本作で長編映画初主演を務める。亡き妻の服を着て暮らす父・青治には、多方面で活躍する板尾創路。青治のパートナーであり、お調子者の居候・和生には、浜野謙太が好演。人も気候も穏やかな島を舞台に、新たな家族像を作り上げた。
「父さん、母さんになろうと思う」という父の台詞に始めは戸惑った主人公だが、島の人々は受け入れている。そんな設定だが、本作は映画産業振興機構(VIPO)による若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)2015で選出されたふくだ監督の短編映画『父の結婚』が長編化した作品。本作が映画化した経緯について、8月31日(土)に開催された「ヒット祈願!特別上映会」で明かされた。

©2019「おいしい家族」製作委員会
短編映画『父の結婚』の舞台挨拶の際に、同作でも同じ役で出演していた板尾が「この映画、良い映画やから長編化にしたいんやけど、映画界のお偉いさん、お金出したってください」という言葉も長編化の後押しとなり、本企画が実現したと監督が振り返ったという。板尾は「短編も非常に面白かったし、長尺で何を描くのか観て見てみたかった」と発言に込めた監督への当時の期待感を語った。
キャスト・スタッフともに10日間の間、島に泊まり込みで撮影が行われた。そのため、共演者との距離が近かったという。板尾は「生活を共にしていて、合宿しているような感じ」と撮影期間を振り返った。

©2019「おいしい家族」製作委員会
本作でふくだ組に初参加した松本はふくだ監督の印象について聞かれると、「(現場で)監督が一番楽しんでいた。自信満々に“ええやん、ええやん”と先陣を切ってやってくれたので、私たちも安心して楽しくやれました」と監督への信頼感をのぞかせた。また、本作のロケ地となったのは伊豆諸島の新島と式根島について「いい意味で周りから遮断されていた場所でした。余計なものがなかったため、私たちも純粋に役に入りこめました」とコメントしている。
作品を鑑賞してみて、ノスタルジックな雰囲気が醸し出されている味わい深い家族映画のようで、食や食べている姿に想いが込められている作品に思える。性別問わず愛のある内容でもあり、また、主人公がメイクをしながら始まる冒頭から80年代の雰囲気も感じ取れた。食を介して家族を描く『家族ゲーム』(森田芳光監督)、『お葬式』(伊丹十三監督)のテイストを踏襲する本作の音楽は、伊丹十三監督作品『マルサの女』『あげまん』などを手掛ける本多俊之が担当している。意識して聞いてなかったが、特報を観なおして「なるほど」と納得。私も『マルサの女』『あげまん』を子供の頃観ており、伊丹作品を好きなふくだ監督の気持ちが分かるような気がした。
全て語ると本編が楽しめないと思うので、公開したら是非映画館で音楽も含め楽しんでほしい。改めて、パンフレットを手にして制作秘話なども読んでみると映画の味わい方が変わる気がする。9月20日(金)全国ロードショー。

©2019「おいしい家族」製作委員会
【作品情報】
『おいしい家族』
出演:
松本穂香 板尾創路 浜野謙太 笠松将 モトーラ世理奈 三河悠冴 栁俊太郎
監督・脚本:ふくだももこ
音楽:本多俊之
製作:新井重人 松井智
エグゼクティブプロデューサー:福家康孝 金井隆治
プロデューサー:谷戸豊 清家優輝
アソシエイトプロデューサー:山野邊雅祥
撮影:高橋草太
照明:山本浩資
録音:原川慎平
美術:大原清孝
編集:宮島竜治
音楽プロデューサー:岡田こずえ
宣伝プロデューサー:滝口彩香
衣裳:江森明日佳
ヘアメイク:佐藤美和
VFX:野間実
音響効果:井上奈津子
助監督:古畑耕平
制作担当:竹田和史
製作:日活/ハピネット
制作プロダクション:ファインエンターテイメント
企画・配給:日活
公式サイト:https://oishii-movie.jp/
<9月20日(金)全国ロードショー>
以上
(編集 木下奈々子)