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<レビュー>原作:朝井リョウ × 主演:佐藤健 × 監督:三浦大輔による就活青春エンタテインメント/映画 『何者』


平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した、朝井リョウによるベストセラー「何者」(新潮社)を三浦大輔監督が映画化。佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之といった、この世代を代表する実力派俳優たちが「リアル」な就職活動を描き出す。


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©2016映画「何者」製作委員会 ©2012 朝井リョウ/新潮社

「桐島、部活やめるってよ」で等身大の高校生を描き切った朝井リョウが今回描いたのは、就職活動を通して自分が「何者」かを模索する5人の大学生たち。お互いを励まし合いながらも、SNSで表の顔とは別の表情を見せる彼らに、読者からは「リアル過ぎる!」「就活中に読んだらマジ凹んだ…」など様々な声が寄せられた。

“痛いほど圧倒的な現代のリアル”が詰まったこの問題作の映画化にあたり、監督・脚本を担うことになったのは、演劇界の若き鬼才・三浦大輔。演劇ユニット「ポツドール」主宰者として数々の話題作を上演しつつ、映画では『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『愛の渦』での、人間に深く切り込んでいく演出が数多くのファンを生み出した。

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©2016映画「何者」製作委員会 ©2012 朝井リョウ/新潮社

そして主人公・拓人を演じるのは『バクマン。』『世界から猫が消えたなら』と立て続けに主演作が公開し、いま最も人気と実力を兼ね備えた俳優・佐藤健有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之といった、この世代を代表する実力派俳優たちとともに、このプロジェクトに果敢に挑戦した。映画のラスト、全ての観客を巻き込んで問いかけられるメッセージ「はたして自分は何者なのか。」誰も観たことのない就活青春エンタテインメントが誕生した。

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©2016映画「何者」製作委員会 ©2012 朝井リョウ/新潮社

【REVIEW】

正直「演劇」が映画に出てくることが、自分としてはイレギュラーだった。
小劇場演劇の舞台から「映画」「テレビ」の世界に出て行った俳優は数少なくない。
限られた人数の劇団に所属して同じ空間で切削琢磨して、人気が出たり観客動員数が増えることを今か今かと待ち望む俳優・演出家・スタッフは多いと思う。

規模は大きいが、俳優の六角精児は扉座という劇団出身だし、上川隆也は演劇集団キャラメルボックス、演出家の三谷幸喜も東京サンシャインボーイズの演出だった。演出家と一緒に劇団員がテレビでお馴染みの俳優になるケースも多い。

本作『何者』では、かつて脚本も自ら書いていた演劇サークル出身の主人公と周りの就活生たちの話だが、SNSと身体を切っても切れない関係になっている彼らが、特有の「距離感」で接していることの絶妙さ、「リアル」な人間関係は見事としか言えない。

主人公は演劇の道を離れて長い就職活動を送っている。分析家ではあるが、ひょっとしたら本気で就職をしたいと願っているかは分からない。

就活生を普段見かけると、内定が出た学生は更なる内定をたたき出す。本作でも「内定」を出した人物が現れてから、絶妙なバランスが崩れていく。

自分が「何者」なのか。内定が出たら「何者」かになれるのか。就職した企業での自分が「何者」なのか。私も分からない。

本作で主人公と劇団での活動を共にした友人への感情が変化していく様は見どころのひとつだ。ひたすら生きていくことに忠実で、今の自分を信じて進むことが決して恥ずかしくもない。そんなメッセージがじんわりと伝わる作品といえる。

後半から少しずつ彼らが置かれていた立場や状況、本音がじわじわと分かっていく様を見守ってほしい。(文・木下奈々子)

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©2016映画「何者」製作委員会 ©2012 朝井リョウ/新潮社

【STORY】

就職活動の情報交換のために集まった、5人の22歳。

企業に入れば特別な「何者」かになれるのか、そして自分は「何者」になりたいのか。それぞれが疑問を抱えながら、就活に立ち向かっていた。

かつて演劇サークルで脚本を書いていた、人を分析するのが得意な拓人(佐藤健)。
天真爛漫で何も考えていないようで、着実に内定に近づいていく光太郎(菅田将暉)。
光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せ続ける、実直な性格の瑞月(有村架純)。
「意識高い系」でありながら、結果が出ず不安を募らせていく理香(二階堂ふみ)。
社会の決めたルールには乗らないと宣言しながらも、焦りを隠せない隆良(岡田将生)。
そんな5人を先輩として見守る、大学院生のサワ先輩(山田孝之)。

力を合わせて就活を進める中、5人はそれぞれの思いや悩みをツイートするが、それはあくまで表の顔。内定が決まらない中、お互いの就活へのスタンスや取り組み方の違いに嫌悪感を抱き、人間関係に歪みが生じ始める。やがて「内定者」が現れたとき、そこで見えてきたのは、これまで隠されてきた裏の顔だった――。


【作品情報】

出演:
佐藤健 有村架純 二階堂ふみ 菅田将暉 岡田将生 /山田孝之

原作:
朝井リョウ(『何者』新潮文庫刊)

監督・脚本:三浦大輔

音楽:中田ヤスタカ
主題歌:「NANIMONO(feat.米津玄師)」中田ヤスタカ(ワーナーミュージック・ジャパン)

企画・プロデュース:川村元気

公式サイト:
http://nanimono-movie.com/index.php

【全国東宝系にて公開中】

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©2016映画「何者」製作委員会 ©2012 朝井リョウ/新潮社
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