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<レビュー>『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』監督・米林宏昌、全世界待望の最新作『メアリと魔女の花』


「この扉を開けるのに魔法なんか使っちゃいけない。どんなに時間がかかっても、自分の力でいつもどおりに開けなきゃ」ジブリという強大な魔法を失くしてなお、ひとりのアニメーション映画の作り手として、映画を作り続けることを決意した米林宏昌監督自身と重なる主人公は人間の「メアリ」。『魔女の宅急便』や『ハリー・ポッター』誕生以前の1971年、イギリスの女流作家メアリー・スチュアートにより書かれた児童文学「The Little Broomstick」を原作にした映画『メアリと魔女の花』。



© 2017「メアリと魔女の花」製作委員会

『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)で同年邦画興収第1位、『思い出のマーニー』(2014年)で第88回米国アカデミー賞長編アニメーション映画部門にノミネートされるなど、国内外で高い評価を得る監督・米林宏昌。スタジオジブリ退社後の新生「スタジオポノック」始動して第一作目の本作。満を持して発表する長編アニメーション映画『メアリと魔女の花』が誕生した。

米林監督の最新作に、ジブリ卒業生とアニメーション内外の新たな才能が集結。ジブリの志を受け継ごう、と設立された新生・スタジオポノック。その代表をつとめる西村義明が、プロデューサーとして『思い出のマーニー』に続き二度目のタッグを組んだ。また、ジブリ作品の多くを手がけてきた作画監督の稲村武志、井上鋭、山下明彦を中心に、日本最高峰のアニメーターたちが集結。

色彩設計は、“ジブリの色職人”故・保田道世の教え子である沼畑富美子。映像演出にスタジオジブリ宮崎駿監督作のすべてを手がけた奥井敦。美術監督・久保友孝を中心に、男鹿和雄、武重洋二ら、ジブリの背景美術の中核を担ったスタッフ達による美術会社「でほぎゃらりー」が総力を挙げて参加となった。そして、美術デザインを担当するのは、名立たるミュージシャンのPV美術を担当し、一昨年はマドンナのプロモーションビデオも手がけたプロダクションデザイナーの今井伴也。そして、「エヴァンゲリヲン新劇場版」全作を手がけた福士享が撮影監督を務め、“ジブリ”と“エヴァンゲリヲン”の邂逅で、さらなる進化を遂げたという。

高畑勲、宮崎駿両監督から学んだスタジオジブリ卒業生と、新たな才能たちの出会い。本作品に覚悟と決意を注ぎ込み、最高の長編アニメーションに挑んだ。


© 2017「メアリと魔女の花」製作委員会

本作の原作は、『魔女の宅急便』や『ハリー・ポッター』誕生以前の1971年、イギリスの女流作家メアリー・スチュアートにより書かれた児童文学「The Little Broomstick」。米林監督が最新作に選んだ題材は、かつて師である宮崎駿監督が選んだ題材と同じ「魔女」だったのだ。

他の魔法文学とは一線を画し“魔女”や“魔法使い”を扱いながらも、持ちえた魔法の力に頼らずに歩もうとする少女・メアリ。明朗で快活、天真爛漫。だけど、不器用で毎日に不満を抱えているメアリが、禁断の魔女の花との出会いをきっかけに奇想天外な大冒険に巻き込まれていく。メアリは魔法による“変身”を遂げ、一夜限りの魔女に。大切な人たちとの小さな約束を守るため、メアリには真の旅立ちが待ち受けますが、そのとき、彼女にかけられた魔法は跡形もなくなり、ただの人間・メアリに戻ってしまう。

メアリの声を演じるのは女優、杉咲花。米林監督の前作『思い出のマーニー』では彩香役を好演し、今年の第40回日本アカデミー賞他、各映画賞を総なめにした若き実力派が、10代最後に、喜怒哀楽豊かなメアリを演じた。そして、天海祐希、小日向文世、満島ひかり、佐藤二朗、遠藤憲一、渡辺えり、大竹しのぶ、他、日本映画界を牽引する豪華な俳優陣が、本作に命を吹き込む。また、脚本は、『かぐや姫の物語』(監督:高畑勲)の坂口理子が手がけ、音楽は、『思い出のマーニー』からの再タッグとなる、村松崇継が担当。世界最高の奏者と評されるジョシュア・メシックによる民俗楽器ハンマーダルシマーの神秘的な音色が劇中音楽を奏でる。

そして、本作始動のきっかけは原作のある台詞に、プロデューサーの西村義明が魅了されたことだったという。
「この扉を開けるのに魔法なんか使っちゃいけない。どんなに時間がかかっても、自分の力でいつもどおりに開けなきゃ」
それは、ジブリという強大な魔法を失くしてなお、ひとりのアニメーション映画の作り手として、映画を作り続けることを決意した米林監督自身と重なる。監督・米林宏昌が最も得意とする精緻で美しい背景美術と、圧倒的なアニメーションの数々。ジブリ人生約20年で培った技術と志のすべてを賭した、あらゆる世代の心を揺さぶる夏のエンターテインメント映画『メアリと魔女の花』が誕生した。

<オススメコメント/REVIEW>

「人間」である主人公が「魔女」になる一瞬を描く本作。本作を劇場で鑑賞したが、様々なシーンにジブリテイストを感じられる。スタジオジブリへのリスペクト、感謝をもって描かれたのだろうと思わせる表現力と描写力に圧倒されるが、それ米林は監督自身がアニメーターとしてジブリに長年勤めたからなのだが、それでもあえて「魔女」を題材に選んだり、ジブリ時代の監督作品でもある「アリエッティ」「マーニー」の流れを汲んだ女性の主人公の成長をテーマのひとつに選んだところも、本当の意味での自分たちの挑戦を選択したからではないかと思う。

西村プロデューサーの「自分の力でいつもどおりに」と放つ魔力が作品全体に染み込んでいる気がする。前情報なしに作品を観てしまうと「ジブリ作品」に似ているなと思うに留まるけれど、アニメーターたちの意気込みや米林監督・西村プロデューサーの本作を描くきっかけを知ると観方がガラリと変わるのでは?と思う。是非、よかったらリピートして観てみて下さい。

(編集 木下奈々子)


【STORY】

赤い館村に引っ越してきた主人公メアリは、森で七年に一度しか 咲かない不思議な花《夜間飛行》を見つける。 それはかつて、魔女の国から盗み出された禁断の“魔女の花”だった。

一夜限りの不思議な力を手にいれたメアリは、 雲海にそびえ立つ魔法世界の最高学府“エンドア大学”への 入学を許可されるが、メアリがついた、たったひとつの嘘が、やがて大切な人を巻き込んだ大事件を引き起こしていく。

メアリは、魔女の国から逃れるため「呪文の神髄」を手に入れて、すべての魔法を終わらせようとする。 しかしそのとき、メアリはすべての力を失ってしまう――。

しだいに明らかになる“魔女の花”の正体。 メアリに残されたのは一本のホウキと、小さな約束。魔法渦巻く世の中で、ひとりの無力な人間・メアリが、暗闇の先に見出した希望とは何だったのか。

メアリは出会う。 驚きと歓び、過ちと運命、そして小さな勇気に。 あらゆる世代の心を揺さぶる、 まったく新しい魔女映画が誕生する。


【作品情報】

声の出演:
杉咲花 神木隆之介 / 天海祐希 小日向文世 / 満島ひかり 佐藤二朗 遠藤憲一 渡辺えり / 大竹しのぶ

原作:メアリー・スチュアート「The Little Broomstick」
脚本:坂口理子
脚本・監督:米林宏昌

プロデューサー:西村義明

音楽:村松崇継
主題歌:SEKAI NO OWARI「RAIN」(サントラ・主題歌/TOY’S FACTORY )

制作:スタジオポノック
製作:「メアリと魔女の花」製作委員会
特別協賛:森永乳業 JA共済

配給:東宝

公式サイト:http://www.maryflower.jp/

【公開中】


※掲載時の情報となります。
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