<レビュー>アニメーション映画監督・新海誠 最新作『君の名は。』大ヒット上映中
『秒速5センチメートル』(07年)、『言の葉の庭』(13年)など意欲的な作品を数多く作り出してきた気鋭のアニメーション映画監督・新海誠。 記録的な大ヒットをしている最新作『君の名は。』の作品情報とレビューをお届けする。この夏、“日本中が恋をする”アニメーション映画の新時代が到来。
©2016「君の名は。」製作委員会
精緻な風景描写とすれ違う男女の物語を、美しい色彩と繊細な言葉によって紡ぎ出す“新海ワールド”は、世代や業界、国内外を問わず人々に大きな刺激と影響をおよぼしてきた。新海誠監督の待望の新作となる『君の名は。』は、夢の中で“入れ替わる”少年と少女の恋と奇跡の物語。世界の違う二人の隔たりと繋がりから生まれる「距離」のドラマを圧倒的な映像美とスケールで描き出す。
作画監督を務めるのは『千と千尋の神隠し』(01年)など数多くのスタジオジブリ作品を手掛けた、アニメーション界のレジェンド、安藤雅司。また、『心が叫びたがってるんだ。』(15年)などで新時代を代表するアニメーターとなった田中将賀をキャラクターデザインに迎えるなど、日本最高峰のスタッフがスタジオに集結した。そして、主題歌を含む音楽は、その唯一無二の世界観と旋律で熱狂的な支持を集めるロックバンド・RADWIMPSが担当したことも話題になっている。
声の出演として、三葉が夢の中で見た男の子・瀧役に同世代の中でひときわ異彩を放つ演技派俳優、神木隆之介。また、自らの運命に翻弄されていくヒロイン・三葉役を、オーディションでその役を射止めた上白石萌音。更には長澤まさみ、市原悦子ほかアニメーションと実写の垣根を越えたまさに豪華キャスティングが実現。
誰もが経験したことのない、アニメーションの新領域。新たな“不朽の名作”が誕生する――。
【STORY】
千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。小さく狭い町で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れを強くするばかり。
「来世は東京のイケメン男子にしてくださ―い!!!」
そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。
一方、東京で暮らす男子高校生、瀧も、奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている、記憶と時間。二人は気付く。
「私/俺たち、入れ替わってる!?」
いく度も入れ替わる身体とその生活に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める瀧と三葉。残されたお互いのメモを通して、時にケンカし、時に相手の人生を楽しみながら、状況を乗り切っていく。しかし、気持ちが打ち解けてきた矢先、突然入れ替わりが途切れてしまう。
入れ替わりながら、同時に自分たちが特別に繋がっていたことに気付いた瀧は、三葉に会いに行こうと決心する。
「まだ会ったことのない君を、これから俺は探しに行く。」
辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた……。
出会うことのない二人の出逢い。運命の歯車が、いま動き出す。
©2016「君の名は。」製作委員会
【REVIEW】
糸が紡ぐ“繋がり”モチーフにした恋愛映画なのだが、本作の凄いところは時空がねじれているところ。
空間と体の入れ替えの謎が解けそうな瞬間。時空がねじれていることと、「ある事件」が発覚する。
出逢うことがない二人が出逢うために必要なファクターが別にあったのだ。
主人公の「瀧」と「三葉」のありえない恋愛は、三葉のどうしても彼に会いたいという気持ちから行動に出た時点の瀧のリアクションでいったんは終わったかと思える。だか、その理由が分かった瞬間、瀧の運命も動き出したのだと。
単なるファンタジーではなく、多くの人間が係っているそれぞれの町や街の環境にいる二人だからこそ、その出逢いは他の人々の運命に繋がっている。
必死でもがく二人が時間と空間を超えて、力を併せて「ある事件」を克服していこうとする姿に涙が出る。
二人の本当の出逢いまでの瞬間・瞬間の積み重ねを、美しい風景のアニメーションで彩られた映像美ともうひとつの魅力でもある「RADWIMPS」の劇中の音楽や主題歌と共に「目撃」してほしい。
(文・木下奈々子)
【作品情報】
出演:
神木隆之介 上白石萌音
成田凌 悠木碧 島﨑信長 石川界人 谷花音
長澤まさみ 市原悦子
原作・脚本・監督:
新海誠
作画監督:安藤雅司
キャラクターデザイン:田中将賀
音楽:RADWIMPS
製作:
市川南 川口典孝 大田圭二
共同製作:
井上伸一郎 弓矢政法 畠中達郎 善木準二 坂本健
企画・プロデュース:川村元気
エグゼクティブプロデューサー:古澤佳寛
プロデューサー:武井克弘 伊藤耕一郎
制作プロデューサー:酒井雄一
音楽プロデューサー:成川沙世子
音響監督:山田陽
音響効果:森川永子
製作:
「君の名は。」製作委員会(東宝 コミックス・ウェーブ・フィルム KADOKAWA ジェイアール東日本企画 アミューズ voque ting ローソンHMVエンタテイメント)
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
公式サイト: http://www.kiminona.com/
配給:東宝
【大ヒット上映中】