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美しき金メダリストの栄光と孤独を描く映画『氷上の王、ジョン・カリー』5月31日(金)公開


アイススケートを「スポーツ」から「芸術」へと昇華させた、伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、その知られざる光と影を描く本作。アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリーの伝説を友人たちのインタビューや実際に残っている映像で蘇えらせた。



© New Black Films Skating Limited 2018 / © 2018 Dogwoof 2018

アイススケートを「スポーツ」から「芸術」へと昇華させた、伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、その知られざる光と影を描く本作。

ジョン・カリーはバレエのメソッドを取り入れた演技で、1976年インスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルの金メダルを獲得する。しかし、マスコミが真っ先に伝えたのは、表に出るはずのなかった彼のセクシュアリティだった。

同性愛が公的にも差別されていた時代に、世界中を驚かせ論争を巻き起こす。しかし、彼は華麗な滑りで多くの人を魅了し続け、現在の日本人スケーターにも影響を与えている。

映画はアスリートとしてのカリーだけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでゆく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。

新たに発掘された、ホームビデオで撮影された彼の最高傑作『ムーンスケート』について監督のジェイムス・エルスキンは「どんなスケートより美しく心を打たれた。これをみて感動を覚えない人はいないだろう」と語っている。

これは、時代に翻弄され不当な扱いを受けながらも、屈することなく高みを目指し、人を遠ざけながらも愛に飢え、滑り、踊り続けた男の物語だと言えよう。


© New Black Films Skating Limited 2018 / © 2018 Dogwoof 2018

そして、映画『氷上の王、ジョン・カリー』から、特別映像が解禁された。ジェイムス・エルスキン監督と音楽監督のスチュアート・ハンコックが、“カリーの魂を甦らせる”映画音楽について語る。

映画に登場する、ジョン・カリーによる数々の芸術的な演目は、クロード・ドビュッシーの『「牧神の午後」への前奏曲』、ニコライ・リムスキー=コルサコフの『シェヘラザード』などの楽曲に彩られている。本作では、その全てをオリジナルの譜面を元にブラチスラバ交響楽団のオーケストラによる演奏で再録音している。

特典映像では、ヨハン・シュトラウス2世の『美しく青きドナウ』が使われた演目の貴重な映像を観ることができる。月に照らされたドナウ川をイメージした深いブルーを基調とした衣装は、カリー自身のデザイン。カリー、ネイサン・バーチ、ティム・マーフィー、ショーン・マクギルの男性4名のカルテットで踊った。

監督は、「カリーは、映画『2001年宇宙の旅』に影響されて『美しく青きドナウ』を選曲した。彼はよくデヴィッド・ボウイと比較され、ボウイが持っていたような審美眼があった」と語っているという。


レビュー

​ジョン・カリーの才能と同じだけの孤独と狂気について描かれたドキュメンタリー映画だっ​​た。

音楽に乗せてバレエのような筋肉の使い方で踊るフィギュア、アイスショーを追い求めた人生だったようだ。自分の追い求める演技が、バレエに近い表現方法だったのかと思う。

今観ると、フィギュアスケートの選手の時は正確な技で魅せているが、バレエのような手先の使い方もしていて、今の現役の選手達の繊細な演技にも通じる部分もあると思う。

自身のカンパニーを設立してからは、赤字も出したが、模索しながら革新的なアイスダンスを披露していたと思う。ただ、一度上手くいかず、氷上で座り泣いたエピソードや、晩年、メランコリックなダンスの途中から、いつも同じくらいのタイミングで泣いていたエピソードには、彼の繊細さと完璧主義を感じる。

プライベートでは、オフレコでジャーナリストに回答したLGBTの側面をマスコミに叩かれる生涯だったが、魂を突き抜けるかのように、感情と芸術表現が共に溢れているひとりの男性だったように感じた。

是非、劇場でカリーの生涯を見届けてほしい。ダンスや音楽・人間愛に満ちた孤独なダンサーの物語だ。

本作は2019年5月31日(金)、新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。

(編集 木下奈々子)


作品情報

作品名:映画『氷上の王、ジョン・カリー』

監督:ジェイムス・エルスキン(『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』)
出演:ジョン・カリー、ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロ
ナレーション:フレディ・フォックス(『パレードへようこそ』『キング・アーサー』)
(2018年/イギリス/89分/英語/DCP/16:9/原題:The Ice King)
字幕翻訳:牧野琴子
字幕監修・学術協力:町田樹
配給・宣伝:アップリンク

公式サイト https://www.uplink.co.jp/iceking/
公式twitter https://twitter.com/theicekingjp
公式facebook https://www.facebook.com/TheIceKingJP/

2019年5月31日(金)、新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開


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