<レビュー>映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
かつてスーパーヒーロー映画でスターになった男が、家族の愛と人生を取り戻すためブロードウェイの舞台に立つ――。本年度 アカデミー賞 作品賞ほか、最多4部門受賞(作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞)!
(c) 2014 Twentieth Century Fox
【INTRODUCTION】
ヴェネチア国際映画祭やニューヨーク映画祭で喝采を浴び、アカデミー賞を頂点とした賞レースで主役を約束された2015年最大の話題作『バードマン』がついに日本に舞い降りた。本年度 アカデミー賞では、最多4部門受賞(作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞)。かつてスーパーヒーロー映画でスターになった男が、家族の愛と人生を取り戻すためブロードウェイの舞台に立つ――。
監督は『バベル』でカンヌ国際映画祭監督賞に輝いたアレハンドロ・G・イニャリトゥ。オープニングからラストまで全編1カットかと見紛う、流れるカメラワークで観る者に圧倒的な臨場感を付きつけるのは『ゼロ・グラビティ』の宇宙映像でアカデミー賞 撮影賞を獲得したエマニュエル・ルベツキ。ふたりの天才が初のタッグを組み、映画史をひっくり返す最高傑作を生み出した。
主役のリーガンには、メガヒット作『バットマン』のマイケル・キートン。スーパーヒーローの元祖を実際に演じたキートンに、どうしても主演してもらいたいというイニャリトゥ監督の切願が実った。『バットマン リターンズ』から22年、「キートン」と「リーガン」が虚実入り乱れ、再起をかけて奮闘する人物像の描き方に観る者の胸がさわめく。
「すべてを手に入れ、すべてを手放した。もういちど輝くために、もういちど愛されるために、いったい何をすればいいのか――?」
(c) 2014 Twentieth Century Fox
【STORY】
スーパーヒーロー映画『バードマン』の主役で、世界的スターになったリーガン(マイケル・キートン)だが、今は長いスランプの中にいた。シリーズ4作目を断って20年、次なる代表作はいまだ現れない。私生活でも結婚に失敗し、娘のサム(エマ・ストーン)は薬物におぼれ、莫大の資産も気が付けばほとんど消えていた。そんな失意の日々から抜け出すために、リーガンは脚色・演出・主演で初めてブロードウェイの舞台に立とうとしていた。プレビュー公演のトラブルを経て、初日前夜、リーガンはバーで、舞台がロングランか打ち切りか「彼女の批評で決まる」ダビサ(リンゼイ・ダンカン)に挨拶する。だが、映画人は大嫌いだという彼女に「史上最悪の批評を書くわ」と宣言されてしまう。そして、舞台初日。果たして、舞台は成功するのか、そしてリーガンの愛と人生の行方は――?
(c) 2014 Twentieth Century Fox
【REVIEW】
小気味いいドラム音と現実と虚構の入り乱れるシーンの数々。それでいて実際にNY・ブロードウェイの劇場で撮影された臨場感あふれる本作。
現在の映画シーンで圧倒的な人気を誇るアメコミ・スーパーヒーローたちの元祖『バットマン』を実際に演じた俳優でもあり、それを思わせる役を過去に演じたという設定の主人公「リーガン」(マイケル・キートン)。
「映画人」と呼ばれるハリウッドの面々と、アメリカの東西をはさんで、「舞台人」が集まるニューヨークのブロードウェイ。それを「リーガン」と舞台の批評家である「ダビサ」(リンゼイ・ダンカン)の対立で、俳優という演技者たちという共通項と、”映像”と”舞台”いう相反するとも思われる、「映画人」・「舞台人」の対立を連想される対比を軸に、「映画」である本作の中での「舞台」の初日までを追う。
さまざまな、リーガンの家族や舞台の出演者たちに起きる問題やトラブル、劇中に自身に起きたハプニング――。思わず「わっ」と叫びたくなる様々な場面の後ろで流れるドラムの音楽に魅せられ、バードマンが後ろから追ってくる主人公の深層心理の情景に、唸る。
映画も舞台もどちらも気になるという方や、映画やテレビしかみないという方も、劇中の俳優が何を思って再起を図るのか、それを是非、見届けてほしい。何よりこの映画のタイトルに込められた愛すべきメッセージに、涙と粋を感じてほしい。(文・ 木下奈々子)
(c) 2014 Twentieth Century Fox
【作品情報】
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
原題・英題
BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)
【スタッフ】
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
撮影:エマニュエル・ルベツキ、ドラム・スコア:アントニオ・サンチェス
【キャスト】
マイケル・キートン ザック・ガリフィナーキス エドワード・ノートン
アンドレア・ライズボロー エイミー・ライア エマ・ストーン ナオミ・ワッツ
【TOHOシネマズ シャンテ他 全国公開中】
(c) 2014 Twentieth Century Fox