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<レビュー>『家族ゲーム』の森田芳光監督デビュー作『の・ようなもの』の35年後を描く映画『の・ようなもの のようなもの』(杉山泰一監督作品)


『家族ゲーム』『それから』『(ハル)』『阿修羅のごとく』……日本映画のフォームを根本から生まれ変わらせる「ひらめき」に満ちた筆致と、唯一無二の着眼点で、数多の傑作、名作を世に放った森田芳光監督。2011年暮れの急逝から、4年。劇場デビュー作『の・ようなもの』の35年後を描く完全オリジナルストーリーが、森田監督の遺作『僕達急行 A列車で行こう』の松山ケンイチを主演に迎え完成した。


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東京国際映画祭(2015年10月開催)舞台挨拶/Photo by Nanako Kinoshita ⓒ KamoShika Works

舞台は古き良き下町、谷中。生真面目なばかりでサエない落語家・志ん田(しんでん)が、落語を捨て気楽に生きる兄弟子・志ん魚(しんとと)と出会い、悩みながらも自分らしく生きる楽しさを知っていく―。落語を続けるのが幸せ?やめて新しい道を探す?好きなあの娘との恋は?いくつもの人生の岐路に立たされた志ん田が出した答えとは?

主演の志ん田役には、森田監督の遺作『僕達急行 A列車で行こう』の松山ケンイチ。志ん田を振り回しながらも優しく見守るヒロインの夕美に『間宮兄弟』の北川景子。そして前作と同じ役で伊藤克信、尾藤イサオ、でんでんらも顔を揃え、さらには森田作品ゆかりの豪華キャストが「まさか」の役どころで観客を驚かせる。

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ⓒ 2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会

多彩かつ綿密でありながら、からりと晴れ上がった空のようにシンプルな面持ち。歯切れのよいリズムにのせて、<人間は面白い>という森田監督が一貫して追求したテーマをしっかり踏襲した作品を作り上げたのは、『の・ようなもの』以降、森田作品を助監督として支え続けた杉山泰一監督だ。

人それぞれ違うけれど、みんな何かになりたくて、でもなりきれない、まさに“の・ようなもの”たちだらけの現代。
それでも昨日より今日、今日より未来へ向かって前向きに生きていく楽しさ、素晴らしさを、すべての“の・ようなもの”の方たちに届けたい。天国の名匠も、ふんわり微笑むような、オマージュを超えた、新しい「青春映画」がここに誕生した。

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ⓒ 2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会

【STORY】
東京、谷中。30歳で脱サラ、落語家になるものの、いまだ前座の出船亭志ん田(松山ケンイチ)。師匠、志ん米(尾藤イサオ)の自宅に住み込み修行中だが、全然パッとしない。同居している師匠の娘、夕美(北川景子)に秘かな想いを寄せているが、彼女にはいつもイジられっぱなし。

ある日、志ん田は志ん米から、以前、この一門にいた兄弟子・志ん魚(伊藤克信)を探し出すよう命じられる。志ん米の師匠、志ん扇の十三回忌一門会に、スポンサーである斉藤後援会長(三田佳子)のお気に入りの志ん魚を復帰させようという魂胆だ。落語とは無縁の生活を送る55歳の男になっていた志ん魚の頑な心を動かすべく、志ん米の命令で志ん田は志ん魚と男2人のおかしな共同生活を始めることに。果たして志ん田は落語も恋も最高の“オチ”を見せることができるのか?

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ⓒ 2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会

【REVIEW】

キャスト陣のそれぞれが、森田芳光監督のいずれかの作品に出演。それぞれの想いをもって役に挑んだ。主演・松山ケンイチは森田監督の遺作でも鉄道マニアとして旅をする主役で参加する。衣装合わせで『間宮兄弟』の自身の役を思い出した、本作のヒロインを演じる北川景子も、森田組に思いを馳せて本作に臨んだ。35年。その長い時を経て『の・ようなもの』のオマージュとして、そしてオマージュすら超えたという森田監督への愛を感じる『の・ようなもの のようなもの』。

「のんびりした」雰囲気を持っている映画ではあるが、「の・ようなもの」という言葉に感じる「何かになりきれない」「そう名乗っていいものか」という思いへの愛情。一度あきらめた「落語家」を再出発する兄弟子への思い、そしてそれを見つめながら成長する脱サラをした主人公の成長。それらをじんわりと思い出しながら、本作について考えてみた。

オリジナルの『の・ようなもの』は当時の邦画としては画期的な作品だったと聞く。それまでネガティブな印象から演じる女優があまりいなかったというソープ嬢を体当たりで演じた秋吉久美子がヒロインだった。廉価版のDVDも発売されるほど、製作陣の本作にかける意気込みもすごい。そのオリジナルの『の・ようなもの』を見ていない方でも楽しめるけれど、『の・ようなもの』を見てから本作を見ると、また味わい深いと杉山監督は昨年の東京国際映画祭の舞台挨拶で語った。35年は長いけれど、変わらない映画への想いを感じる作品。それが『の・ようなもの のようなもの』かなと思った。(文・木下奈々子)

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東京国際映画祭(2015年10月開催)舞台挨拶/Photo by Nanako Kinoshita ⓒ KamoShika Works

【作品情報】

原案:森田芳光

出演:
松山ケンイチ   北川景子
伊藤克信 尾藤イサオ でんでん 野村宏伸
鈴木亮平 ピエール瀧 佐々木蔵之介 塚地武雅 宮川一朗太 鈴木京香 仲村トオル 笹野高史 内海桂子
三田佳子

監督:杉山泰一 脚本:堀口正樹

音楽:大島ミチル
主題歌:「シー・ユー・アゲイン雰囲気」尾藤イサオ/作詞:タリモ 作曲:濱田金吾(ユニバーサル ミュージック)

製作総指揮:大角正 製作代表:高橋敏弘 佐野真之 安田猛 矢内廣
プロデューサー:三沢和子 池田史嗣 古郡真也
キャスティングプロデューサー:杉野剛 アソシエイトプロデューサー:竹内伸治 ラインプロデューサー:橋本靖
撮影:沖村志宏 美術:小澤秀高 照明:岡田佳樹 録音:高野泰雄 編集:川島章正
衣装:宮本まさ江 スクリプター:森永恭子 音響効果:伊藤進一
落語指導:古今亭志ん丸 助監督:増田伸弥 制作担当:福井一夫

製作:松竹 アスミック・エース KADOKAWA ぴあ 企画協力:ニューズ・コーポレイション
制作プロダクション:FILM 配給:松竹

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ⓒ 2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会
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