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<レビュー>スタジオジブリ作品・映画『風立ちぬ』


スタジオジブリ最新作、宮崎駿監督が5年振りに描いた『風立ちぬ』。【2013年 公開作品】


INTRODUCTION

かつて、日本で戦争があった。

大正から昭和へ、1920年代の日本は、
不景気と貧乏、病気、そして大震災と、
まことに生きるのに辛い時代だった。

そして、日本は戦争へ突入していった。
当時の若者たちは、そんな時代をどう生きたのか?

イタリアのカプローニへの時空を超えた尊敬と友情、
後に神話と化した零戦の誕生、
薄幸の少女菜穂子との出会いと別れ。

この映画は、実在の人物、堀越二郎の半生を描く──。

生きねば。


COMMENT

彼は何のために飛行機を作るのか?

これまで作られてきた戦争を題材にした映画の数々。
その主人公のほとんどは、国のために、愛する人のために戦った。

宮崎駿が5年振りに手がけた映画「風立ちぬ」。
主人公・堀越二郎は空に憧れる少年だった。
やがて青年へと成長した二郎は、
戦争へと突入する激動の時代の中、
自分の夢のために生きようとする。

そんな、夢を追い続ける二郎の声に大抜擢されたのは庵野秀明。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの総監督としても知られているが、
約30年前に「風の谷のナウシカ」の巨神兵の原画を担当し、宮崎からも深く信頼されている。
“滑舌がよい”“早口”“凛としている”そしてなによりも“いまを生きている”という宮崎自らの想いを受け、
オーディションを経て主人公の声を担当することになった。
そして、音楽は「風の谷のナウシカ」以来すべての宮崎作品に関わり、
ともに世界観を築き上げてきた久石譲。
また主題歌には松任谷由実のファーストアルバム(荒井由実名義)の中の名曲「ひこうき雲」に決まった。

世界を席巻した「もののけ姫」から16年。
宮崎駿の待望の最新作は、
閉塞感が増し、時代が破滅に向かって突き進む時代の中で
自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描いた物語である。

僕はただ、美しいヒコーキを作りたかった――。

(C) 2013 二馬力・GNDHDDTK
©  2013 二馬力・GNDHDDTK

REVIEW

宮崎駿監督の5年振りの新作「風立ちぬ」。映画を観ていて、泣いた。何度か泣いた。
主題歌「ひこうき雲」は、あれから何度聴いたか分からない。
映画の世界に浸っていたいときがある。でもそれの範疇を超えている。
じっと自分の中に「風立ちぬ」が潜んでいる。
たとえ、それが自分の前に立ちはだかっている何かであっても。

主人公の二郎は、飛行機に夢を馳せ、夢で出会う親友に刺激を受け、
「戦争」に飛行機を作る技術者として直面する。

そして「恋」――。

このふたつは日本の誰でも抱えてる何かなのではないかと思う。決して私も例外ではなく。

ただ、過去の「戦争」や世界情勢とか、それ以前に、美しい「飛行機」を作りたいがために
命を削って生きた二郎を通して、「戦争」を描こうとしたわけではないのが、本作だ。

「大人のための映画を作りたいんじゃない」

そう宮崎監督は、「風立ちぬ」を映画化しようと提案した
スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに話したそうだ。

ただ飛行機を愛して魅了されて狂おしく思い、まっすぐに進んだ一人の人間がそこには描かれていた。

そして恋愛をした二郎。こんなに美しく綺麗な恋愛を描いたアニメーションは私は知らない。
作品の中に登場する少女との恋愛は、主題歌「ひこうき雲」も連想させ、
少女は大人になり、二郎を好きがためある行動に出る。
そんな彼女について二郎が身を寄せていた黒川家の奥さんが言った言葉が忘れられない――。
だから、この映画を観る意味があるんだと思う。
忘れられない何かを、夢とか恋とか、抱えないといけないものを背負っても
「ただ、生きたい」と思える勇気をくれる映画だと思う。

2013/7/1


【作品情報】

原作・脚本・監督: 宮崎 駿
音楽: 久石 譲

スタジオジブリ・日本テレビ・電通・博報堂DYMP
ディズニー・三菱商事・東宝・KDDI提携作品
堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて

生きねば。
配給:東宝

【2013年公開作品】


© 2013 二馬力・GNDHDDTK
※ 情報は掲載当時のものです。