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第29回東京国際映画祭クロージングセレモニー開催。妻夫木聡・高畑充希・新海誠 監督、ゴジラと山内章弘プロデューサーら登壇。東京グランプリは『ブルーム・オヴ・イエスタディ』に決定


ついに閉幕となった2016年の東京国際映画祭。クロージングセレモニーはEXシアター六本木にて行われ、東京グランプリや各賞が発表された。「ARIGATŌ(ありがとう)賞」では、妻夫木聡・高畑充希・新海誠監督、ゴジラと山内章弘プロデューサーが、「SAMURAI(サムライ)賞」にはマーティン・スコセッシ監督と黒沢清監督に授与された。コンペティション部門の東京グランプリは『ブルーム・オヴ・イエスタディ』(監督:クリス・クラウス)に決定した。


ARIGATO賞
© 2016 TIFF / ARIGATŌ賞 受賞者

ARIGATŌ(ありがとう)賞」では選出理由も一緒に司会の羽鳥慎一アナウンサーより発表された。まず、俳優としての活躍をたたえられ、妻夫木聡が受賞。さらに女優としての未来を期待されて、高畑充希が選ばれた。また、今年度最大のヒット、2016年にアニメーション界の新星として新海誠監督。さらなる飛躍を期待されて、ゴジラと山内章弘プロデューサーも選出された。

ARIGATŌ賞・各受賞者のコメントは以下の通り。

「俳優の転機となった『ウォーター・ボーイズ』で映画作りの汗臭さを感じた」という妻夫木聡。「映画界の皆さまから『ありがとう』という賞をもらえるとは思いませんでした。ありがとうございました」とコメントした。

高畑充希は「こんな素敵な賞を頂けて凄く幸せ」「ミュージカルの世界から10年経って映画の世界でゴジラさんと一緒の舞台に立てるとは思わなかった」「この先どうなるか。運や人とのご縁でここまでやってこれた。恵まれた10年だった」コンペティション部門で『アズミ・ハルコは行方不明』の出演でも本映画祭に参加している高畑充希は、「こちらこそ『ありがとう』ございました」とコメントした。

新海誠監督は「アニメーション監督の新海誠と申します」と語りはじめ、受賞の理由が「2016年にアニメーション界に新星あらわる」という事だったが、「10年前からアニメーション界にいたのですが…」と話す新海監督は、「(自分を)発見された今年と同じように、発見された今までもある」「これからも物語を追うべきものは何なのか、見つめていきたい」と話した。また、受賞にあたり、「自分の名前で頂いた賞ではあるが、『君の名は。』という作品として貰えた賞だと思っている」と、スタッフや声優陣・RADWIMPSへの感謝の言葉を述べた。そして「観てくださった皆様に、この場を借りてお礼を言いたい」と伝えた。

東宝の山内章弘プロデューサーは「ゴジラは52年前に生まれて、今年、日本では12年振りに復活した」を語り、「なかなか復活は難しいものだが、日本の観客だけでなく海外の皆さまに(向かって)、日本を背負って、強く、足踏んでいってほしい」と伝えると共に、「今日、11月3日は“ゴジラの日”で初代のゴジラの公開日だった」とコメント。またゴジラの最新作『シン・ゴジラ』はまだ公開中とあって「シン・ゴジラの復活を目に焼き付けてほしい」と語った。

各部門受賞作品は以下の通り。

「日本映画スプラッシュ」部門では「日本の環境で育った新しい監督との出会いがありよかった」と審査委員からまずコメントがあり、作品賞として『プールサイドマン』(監督:渡辺紘文)が選ばれた。渡辺監督は、涙声で「(デビュー作から)僕を育ててくださった東京国際映画祭と、映画祭の観客の皆さまに感謝している」「今年は激戦だった」と振り返り「それぞれの作品の監督の皆さんを尊敬している」と、感動しきりだった。

「アジアの未来」の審査員の橋口亮輔監督からは、発表にあたり「出品した10作品の関係者の皆さまにお礼を言いたい」「1作品ずつ(徹底的に)議論した」ほど、審査員を刺激したという。「重いテーマを扱う作品や新人とは思えない技巧の作品」もあり、これから「来年・再来年と、アジアの未来に(才能が集まる)東京の場が繋がっていくことを願っている」と総括した。

「アジアの未来」部門 国際交流基金アジアセンター特別賞には、「コメディと厳粛なドラマ」など、二重化された女性のキャラクターを描いた『ブルカの中の口紅』(監督:アランクリター・シュリーワースタウ)が選ばれた。シュリーワースタウ監督は「このテーマを信じてくれたプロデューサーに感謝している」「アジアの国の違いはあるが(違いのある)女性たちが未来を繋げてほしい」と語った。

「アジアの未来」作品賞は『バードショット』(監督:ミカイル・レッド)が選出された。レッド監督は「プロデューサー、パートナー、キャスト陣に感謝したい」「苦労しながら映画を作っている皆さんや、フィリピンがもらえた賞だと思っている」とコメントした。

また、「SAMURAI(サムライ)賞」はマーティン・スコセッシ監督、黒沢清監督に授与された。

スコセッシ監督は、授賞式とスケジュールが合わず来日は叶わなかったが、黒沢明監督や黒沢清監督をはじめとする「日本の監督や日本文化、小説に世界を広げられた」というビデオメッセージが届けられた。ビデオでは、「(SAMURAI賞は)“人生功労賞”のようなものだと思うが、私はまだ生きています」とにこやかに語った。黒沢清監督はこのビデオメッセージを壇上で見て「スコセッシ監督のコメントを今初めて見た。感動した」と驚いた様子で、「35年映画を作ってきた。(スコセッシ監督の言うように)まだ生きているので続けていきたいが、ひと区切りしたことで、この賞を頂けたと理解しています」と話し、感謝の言葉を伝えた。

「コンペティション部門」の各賞は以下の通り。

「観客賞」は『ダイ・ビューティフル』(監督:ジュン・ロブレス・ラナ)が受賞。

「WOWOW賞」は『ブルーム・オヴ・イエスタディ』(監督:クリス・クラウス)が受賞。クラウス監督は「『ありがとう』と心の底から言いたい」と話し、また「プロデュースしていて理解してもらえるかわからなかったが、このような賞を頂けて嬉しい」と、一緒に登壇したプロデューサーからもコメントがあった。

「最優秀芸術貢献賞」は「映画の命と言うべき光を大事にした」「文法を大切にした」作品として映画『ミスター・ノー・プロブレム』(監督:メイ・フォン)が受賞した。フォン監督は「今、ステージにいるスタッフ、キャストのおかげだ」「このようなアートフィルムを中国で撮影することは周囲の協力のおかげ」と、また「この映画に感謝したい。素晴らしい日々を届けてくれた」と語った。

「最優秀男優賞」には「女優賞と呼んでいいものか、男優賞と呼んでよいものか迷った」と受賞者の紹介があると、会場がわっと沸き、受賞者が発表となった。『ダイ・ビューティフル』のパオロ・バレステロスに授与された。監督が一人で壇上に立つと、サプライズで俳優のパオロ・バレステロスが登場。「レッドカーペットだけだと思ってドレスで来てしまいました」「私としては女優賞に選ばれると思っていました」とコメントした。そして、「マニラや世界中で、この作品を観てくださった方を決して忘れない」と力強く語った。

「最優秀女優賞」は、『サーミ・ブラッド』のレーネ=セシリア・スパルロクに授与された。小柄であどけない笑顔のレーネからは「心臓がどきどきして信じられません。一緒に出演してくれた妹や、監督にも感謝している」と語った。

「最優秀監督賞」には、『私に構わないで』のハナ・ユシッチ監督に授与された。「(受賞されている皆さんは、事前に)教えてもらっているのだと思っていたのですが、本当にサプライズで何もスピーチを用意していなかったのですが、皆さんに感謝しています」とコメントした。本作については審査員より「登場したときから女優が自然体であった」「衝撃的な場面でも観てしまう作品」と評価される映画だった。

「審査員特別賞」には、『サーミ・ブラッド』が「最優秀女優賞」に続いて受賞アマンダ・ケンネル監督が「ここに一緒に立っているセシリアと妹のおかげです」「観客の意見を聞いたり(日本の)文化にも触れる機会になった。これが映画祭なのだと思った」とコメントした。

「東京グランプリ」には、「映画は悲劇の瞬間を描写しますが、最後には思い出も消えてしまっている」「(この作品は)映画の記録という役割を果たしている」と評価され、『ブルーム・オヴ・イエスタディ』(監督:クリス・クラウス)がWOWOW賞に続き受賞した。

本作のクリス・クラウス監督からは「(審査員の)ジャン=ジャック・ベネックスさんと一緒に同じ舞台に立てたことで夢が叶ったような気持ちだ。19歳や20歳のときに彼の作品を観て育ったと、先ほど本人にフランス語で伝えた」「東京国際映画祭のチームや、出演してくれた俳優陣に感謝したい。プロデューサーのカトリンからもコメントをいただきたい」と話し、「本当にうれしいです。クリスとの貴重な時間を過ごした。うまく言えないのですが、圧倒されています」とプロデューサーからもコメントがあった。

全受賞者
© 2016 TIFF / 第29回東京国際映画祭・全受賞者

そして、小池百合子都知事も駆けつけ、「東京グランプリ」で表彰状や麒麟像を授与した。壇上に立つと、国内外の映画関係者・マスコミ、観客の前で「改めて東京にようこそと言いたいです」「コンペティション部門には98の国と地域から1,502作品が応募がありました。過去最高の数と聞いています。東京を出発点として世界に発信していく場として、日本の文化も東京から発信する機会となってほしい」と語り、「2020年のオリンピック・パラリンピックの東京大会ではスポーツだけでなく文化を発信するチャンスとなってくれることを願っている」と話した。

東京グランプリ
© 2016 TIFF / 東京グランプリ 『ブルーム・オヴ・イエスタディ』(監督:クリス・クラウス)

コンペティション部門のジャン=ジャック・ベネックス審査員長からは「16作品、様々な視点を観ることが出来ました」「映画の作り手は時代を映し、(映画という)同じ夢を見ることを知らせてくれる」と同時に、今回のコンペティション部門の作品を通し、「普遍性だけでなく人種差別など互いの違いも見せつけられました」「人間の違いがあることが、互いを理解をするきっかけになる」と、映画について語った。

東京国際映画祭の椎名保ディレクター・ジェネラルからは、セレモニーの最後に「今年は1,502本から16本のメインのコンペティション部門、10本のアジアの未来部門、8本の日本スプラッシュ部門、合計34本の作品が選ばれた」「34本こそが受賞者だと思っております」と話し、「作品自体だけではなく、作品を最大限に気持ちよく観客に届けるためにスタッフ1,000名、ボランティア、一般の皆様と併せると1,350名が協力してくれた。感謝をしたい」「来年、第30回目の東京国際映画祭でまた会いましょう」と語り、クロージングセレモニーは終了した。これで10月25日から続いた祭典が閉幕となった。それぞれの作品が映画祭を離れ、国内外で観る機会が一層増えることを心より願っている。(文・木下奈々子)


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